2013.10.29
大磯市に出店すると、一気に地元の友達を増やせるんです。
遊びから始まる地域活をコンセプトに、神奈川県大磯町で「西湘を遊ぶ会」というNPO法人の代表をしています。
大磯町は、生産者人口が少し増え若返ったと言われていますが、いっぽうで農家の方の高齢化で荒廃農地が増えるという問題を抱えています。それをなんとかしたいと思いました。
私たちがやっていることは、都会に住む人に週末農業の機会を提供して、農作業に参加した人が、いっしょにお昼ご飯を食べ楽しめる、そんな農業をすることで荒廃農地の再生に取りくむという活動をしています。地元の酒造会社の協力で、自分たちで作った酒米でお酒を作る「僕らの酒」プロジェクト、なんてこともしています。
ミカン栽培が盛んな場所でもありますが、こちらも高齢化で手がまわらなくなっています。そこでボランティアで収穫に来てくれたら、ミカンを10kgあげるという企画で援農しています。収穫したミカンの一部は、地元の酒造会社(熊澤酒造)で「こたつみかんエール」というビールを造ってもらい販売もしています。
私たちの活動の基本は「自分たちがやりたい」と思ってもらえるドキドキ、ワクワク感のある企画を考え、遊びで地域課題を解決することです。実際、楽しくなければサスティナブルじゃない(続かない)ですからね。
※NPO法人 西湘を遊ぶ会 http://www.seisho-asobu.jp
※僕らの酒プロジェクト http://seishorakuza.jp/myinaka/
大磯町は日本で初めて海水浴場ができたところで、明治時代に松本淳という人が、海に浸かって健康になりましょうという海洋療法を始めて、明治時代には一大別荘地になりました。
ところが時代も変わって、お屋敷が維持できず売却され、別荘地や海水浴場のお客さんも少なくなり、海水浴や別荘に避暑に来る人たちで成り立っていた商店も無くなっています。
でも保養地・別荘地らしい雰囲気や景色は、大磯の原風景なので、なんとか維持できないかというのが思いなのです。かといって大磯町を一大観光地にしたいわけではありません。出来る限り変えたくないのですが、老舗が時代とともに変化することで、伝統を守っているように、僕たちも変わり続けないと、守れないんです。
私たちの世代は、なかなか地元に仕事が無いのですが、地元で仕事をしながら、大磯の風景を残すことをしていきたいと思いながら、活動しています。
そのひとつが大磯市で、漁協の朝市が毎月第3日曜日なので、それにあわせて、毎月第3日曜日に朝9時から14時まで、大磯港で、市を開催しています。
漁協の朝市で地産の干物を買って食べることもできるし、マッサージ屋さん、英会話、似てない似顔絵屋さんなど、おもしろいお店が出ています。芝生公園があって、家族が座りながらご飯を食べている光景が見られます。
2010年4月にはじめたときは19店舖ほどで、来場者も朝市に来ていた200人ほどだったのですが、30分のテレビ番組の特集が組まれてから来場者も増え、いまは年間に5万人を切るくらいの動員ができ、出店者も毎回平均150店程度になりました。
大磯町で一番、大きなイベントで県下でも最大級のイベントのひとつになっています。観光資源になったのですが、若い人たちが出店することでチャンスを見つける場所、何かにチャレンジできる場所というコンセプトで開催しているんです。
例えばDTPデザイナーとして独立した佐藤くんは、大磯に帰ってきて、仕事くれと言っても誰も仕事をくれないんですよ。
しょうがないから、オリジナル商品を作って大磯市に出店をしたら、コンセプトとかなかなか面白いねっていうことで、取り扱う店舗が増えました。
するとショップカード作ってくれとか、看板作ってくれとか。彼もアルバイト生活を抜け出してデザイナーとして活動しています。
大磯の牛舎を改装して、スツールとかを作っていた永村さんも販路がなかったので、たまたま知った大磯市に出店したんです。そしたらスツールも完売いたしました。オーダーなので時間がかかり、3か月先まで予約がいっぱいだそうです。
茅ヶ崎の無店舗販売でやっていた雑貨屋さんのリーさんは、茅ヶ崎のあるお店の前で販売していたのですが、軒先を借りていたお店が無くなってしまって、知人を通じて大磯市に出店しました。
そしたらcasaBRUTUSなんかでも取り上げられて、西湘で一番人気のあるお店になったのではないかと思います。
NPO団体、福祉団体、市民活動団体、パフォーマーさんには無料でブースを提供しているので、自分たちの活動をPRしたい、パフォーマンスをみてもらいたい人に、大磯市を使ってもらっているのですが、これも大磯市の楽しみにもなっているようです。
大磯市の出店には基準が2つあって、ひとつはLocalfirtst、地元の人かどうか、地産品を扱っているか、ということですね。もうひとつはIndependent、個人の手作り品だけ出店してもらっています。ときどきチェーン店さんが出たりするんですが、売れないんですね。
小田原や茅ヶ崎からの出店者も多くて、大磯市の情報が小田原、茅ヶ崎、湘南、西湘エリアあたりまで届くようになり、大磯市が周辺の人たちの、多様な主体の交流の起点になってきています。
元歯医者さんのビルをセルフリノベーションした、ソーシャル雑居ビル「OISO1668」も運営しています。名前の由来は住所が1668番というだけなのですが、ボクと同世代の人が肩を寄せ合って生きていけないかということをコンセプトにしていて、若い世代が地元に戻ってチャレンジできる場所になっています。
シェアオフィスは6名でシェアしていて、ひとりは外人のアートディレクター、店舗のコンサルやって美容関係の経営をしているやつ、ウェブデザイナーといった状況です。
※ソーシャル雑居ビル OISO1668 http://www.oiso1668.com/
今年(2013年)は「砂浜ビアガーデン」というのを開催しました。大磯町は海水浴で賑わっていた場所なのですが、平成2年に58万人を記録してから、どんどん減少して、いまは4万人くらいまで減少しているのではないでしょうか。
大磯町の月別の観光客数を見ると、7月、8月、9月が多くて8月が突出しているんですよね。これもまさに大磯ロングビーチと海水浴客が大磯町の観光客のほとんどという状況です。
海水浴は大磯町が発祥ですが、いまや海水浴場なんてあるんだ、というレベル。これをもう1度、海水浴場として再生していくとなると、海の家をきれいにしようとかいう話になります。
ところが海の家の権利を持っている人たちは、人がどんどん来なくなるから投資をしない、投資をしないから汚くなる、汚いから客は来ない、という悪循環にはまっています。
そこで投資しなくても観光客を増やせないかと考えたのが「砂浜ビアガーデン」でしす。単純に夏の夜の砂浜って気持ちいいんですよ。海水浴場なんかよりよっぽど気持ちいい。
大磯は砂浜が広くて、海の家から水際まで100m近くあるんです。これを客席にしたら、湘南で一番でっかいビアガーデンになるんじゃないか。だから季節限定の湘南最大のビアガーデンを作って、ミシュラン一ツ星を取りましょうという話から始まりました。
地域振興株式会社の予算で、海の家を経営しながら、実験的にアガーデンをやったんですね。非常に評判がよくて、新聞にも取り上げていただいて、多くの人にご利用いただきました。
来年は大磯プリンスホテルと提携して、でっかくやろう、みたいな話になっています。
僕たちは大磯を美しい町、住みたい町、出かけたい町にしたいのです。そのためにそれで自立したローカル経済圏を形成して、港を立て替えて20億くらい稼げるような場所にしましょうと大磯町と話をしています。
それによって若い世代が地域で活躍できることを大磯で実現したいんですね。
中島:
大磯市に来た人、出店した人は町に対しての意識が変わるのでしょうか?
原:
出店すると人口が少ないので急に知り合いだらけになって、地域に明るくなります。商工会が会員になると出店料が安くなる補助をやっていて、クリエイターさんとかが会員になって、平均年齢が下がっています。逆に経営相談に行くという関係ができて。商工会議所のイベントに参加してくれています。
地域に関わりができると、町をこうしたいという意見が出てきて、観光協会やまちづくりの人たちとの関係もでき、参加してくれています。
大磯市の出店者は地元の人だけでなく、茅ヶ崎、小田原から出ている人もいます。オール大磯じゃないとだめだ!という意見も無くはないのですが、大磯だけに限定してしまうと、ここまで広がらなかった。結果として商工会の会員が増えているので、それでOKというところに落ち着いています。