2013.9.2
中島先生の「社会的企業とは何か」講座第2回。市場性の乏しい分野で事業をする社会的企業の経営を持続させるヒントはどこにあるのでしょうか。
社会企業家が目指す事業は、基本的に儲けられません。というのも事業を継続するには、財務的なリターンを追い求めなければなりませんが、それを追求しすぎれば、社会的な課題を解決することと、意図しないトレードオフが生じます。
※トレードオフ=いっぽうを追求すれば、他方が犠牲になる関係
では、どうするか。イギリスにあるピープルズスーパーマーケットの事例を紹介しましょう。
ピープルズスーパーマーケットは、25ポンドの年会費と月に4時間の労働をすれば誰でも会員になることができ、1割引で商品を購入できます。また店舗の運営や販売する商品は、会員が参加する総会で議論されたうえで決定されます。
会員は利用者であると同時に、経営に参加する社員でもあります。コミュニティーに所有されている企業です。
また高齢者がピープルズスーパーマーケットに立ち寄って世間話をする光景も見られ、地域の新たなコミュニティー作りにも貢献しています。社会貢献とビジネスを融合させた事例ですね。
おもしろいのは債務超過になったら、仕入れた物の支払いをしなくても良いというルールがありながら、それでも商品を扱ってくれないかと業者からの売り込みが絶えません。
中島先生は、こう続けます。
利用者が単なる消費者なら、金銭だけの関係です。その結果、経営に財務的な課題をそのまま背負い込むことになり、体力のある大手企業だけが生き残る結果になるでしょう。
そうではなく、会員には労働力を提供してもらい、経営に参加してもらうことで、利用者を単なる消費者ではない関係にしてしまうことで、人件費という経営課題を乗り越えたのです。
もう一つはお話したいイギリスの事例があります。
ロンドンバスを運営しているHCTの子会社に、チャリティーとしてコミュニティートランスポートを行っている会社があり、社会的企業という位置づけになっています。
なぜわざわざ社会的企業にしたかというと「社員が地域のためにある会社なのだ、お金を儲けるためだけの会社ではないという自覚を持って働いてもらいたいから」とHCTの会長が話していました。
保険料と税金で財源を賄うフォーマルサービスは、全国どこに行っても一律、同じサービスを受けられます。いっぽう制度がカバーしきれないインフォーマルな領域があります。住むところ、家庭環境などの違いがあるため、人間一律なはずがありません。
その地域に住む人たちには必要だが、財源はないということが起きています。社会的企業はこのインフォーマルな部分をどう改善していくかということです。
ピープルズスーパーマーケットのように、サービスを提供する事業者と利用者という単純な関係ではなく、「支えあい」が大切になってくるのではないでしょうか。