第一回研究会

2013.8.25

中島先生による「社会的企業とは何か」第一回の講義は、社会的企業の定義から始まりました。


【社会的企業とは、社会的排除をビジネスという手法で解決できる事業体】

社会的な課題、克服したい課題を持続的に克服していくことは、非常に難しいと思います。私は今までになかった新しい社会起業家像を求め、ソーシャルビジネス研究会に参加させていただきました。

社会的企業の定義

まず「社会的企業」の定義を考えてみましょう。イギリス、アメリカ、大陸ヨーロッパの例を挙げてみます。

イギリス:社会的排除、ビジネスという手法で解決

アメリカ: NPOが事業化

大陸ヨーロッパ: 協同組合的活動

国によって定義は多様ですが、法的な枠組みは非常に乏しいと思います。しかし、イギリスでは、社会的企業を支援する政策を作るため、明確な社会的企業の定義というものが存在していて、社会的排除・社会的放出をビジネスという手法で解決する事業体とされています。

では社会的排除・社会的放出とは何か。具体的に言うと、

  • 基本的ニーズの不備(食料、衣類、医療)
  • 物質的剥奪(耐久消費財)
  • 制度からの排除(選挙の投票、公的年金制度、医療保険制度、公共施設・公共サービス、ライフライン)
  • 社会関係の欠如(人とのコミュニケーション、交友、親戚とのつながり、社会ネットワーク)
  • 適切な住環境の欠如(住居の不安定、住環境)
  • レジャーと社会参加の欠如(旅行、外食、社会活動)

などが挙げられます。 出典:ソーシャル・エンタープライズ・ロンドン(SEL) 資料より筆者訳出

所有のさまざまなカタチ

社会的企業には特に民主的意思決定が必要。地域によって所有されていたりしてはならないと考えています。

社会企業家、社会的企業はこうでなければならないというのはナンセンスではありますが、社会に所有されるような形態のほうが持続可能なビジネスモデルを構築できるのであれば例外です。

例えば庄内映画村ですね。株主は地域の事業者がそれぞれ50万円を出資して30人で増資も可能。その地域の事業者の方が映画村を誘致することによって地域を潤す目的を持っています。 ※庄内映画村 http://www.s-eigamura.jp

社会的企業の一番大事な部分は、誰の所有かということではなく、他の事業や他のセクターではなかなか賄えないような、しかし、地域やその人に必要とされるようなサービスを何らかの形で工夫して提供できる部分です。

そもそも誰も手を付けない。そういった分野に光を当てるのが社会的企業であり、社会的企業に必要な要素の一つなのです。

社会的起業の3つの特徴

もう少し社会的企業とは何かを掘り下げましょう。

「社会性」「事業性」「革新性」の3つの特徴があります。

社会性とは、コミュニティへの貢献という明確な目的を持って、市民グループによって立ち上げられたこと。資本に所有されない参加者の意思決定の権限があること。活動によって影響を受ける人たちの参加、利潤分配の制限などが挙げられます。

事業性というのは、財・サービスの生産、供給の継続的活動。高度な(経済的)自律性、ある程度の経済的リスク、最低限の有償労働などが挙げられます。

革新性というのは、財・サービスの革新性、財・サービスの提供するしくみの革新性、資源調達の革新性と考えています。ただし新しいサービス、革新的なアイディアを見つけても、持続可能でなければ意味がありません。

誰にどうやってなにを提供するのかは、株式会社と変わりません。一般的な経営方針が必要であり、社会的に排除されている人たちを、自分たちの企業で雇うことによって市場との接点を作ってあげるための雇用形態も必要となるでしょう。

何らかの形で市場から排除されている人たちに対して、必要なサービスを提供するには、一般的な企業と同じように市場から経営資源を調達するだけではなく、社会性に基づいた支援的な経営資源も調達し、ハイブリッドな資源調達構造を生んでいくことになります。

そして市場、公共サービスとの接点を、何らかの形で自分たちが対象とする受益者に提供し創造していく。これが社会的企業であると思っています。